絵子さん4
                                 (1)

     絵子さんは、カレンダーの前で、
    「もう12月かぁ。今年もたくさん絵を描いたなぁ。1年もあと少し。机のまわりの掃除をしないとね。」
    絵子さんの机のまわりは、イラストの仕事のためのいろんな資料や紙くず、色鉛筆がちらかって
    います。
    「あぁ〜、片づけが苦手だからな。でも、年の初めはビシッ!と気を引き締めて、気持ちよく新年を
    迎えなくちゃ。」
    よし!とガッツポーズをしました。

     そこへ飼い猫のきんさんがやって来ました。きんさんは、絵子さんの足に体をすりよせてゴロゴロと
    喉をならせて甘えてから、絵子さんの机の下に置いてあるアンカのところへいって体を丸めて目を閉じ
    ました。
    「いいな、きんさんは。な〜んにもしなくていいんだから。」
    絵子さんの声が聞こえたのか、きんさんは絵子さんをチラッと見て、大きなあくびをひとつして、今度は
    もっと体を丸めて手も足もシッポも体の中に入れてしまいました。まるで、絵子さんの言ってることなん
    て聞こえないよって言ってるみたいに。
    「く〜っ!かわいくないなーっ!」
    絵子さんは、ブツブツ言いながら色鉛筆の片づけからはじめました。

    「あれ?おかしいなぁ。白い色鉛筆だけが1本も見当たらないなんて。あんまり使わない色なんだけど
    ないと困るし・・・。買ってきておいたほうがいいかな。」
    掃除の苦手な絵子さんは、エヘッと笑って、
    「先にみどり屋さんに色鉛筆を買いに行ってこようかなぁ。」
    みどり屋さんは、いつも利用している画材屋さんです。さっそくジャケットを着て外に出てみると、
    「さっぶーい!」
    
    今日は、この冬一番の冷え込みで、外の空気は鼻の奥がツーンとするくらい冷たいのです。
    「寒いなぁ。掃除してるほうがいいかも。どうしようかな。」
    空を見上げると黒い雲がこっちにやって来ています。
    「雨か雪が降るのかなぁ。行くなら早く行かなくちゃ。」
    絵子さんはジャケットの襟を立てて、みどり屋さんへ急ぎました。

     みどり屋さんに着くと、お店の中はとても暖かでした。
    「あ〜あたたかい。」
    絵子さんはホッとして、お店の中の色鉛筆のコーナーに行きました。すると、みどり屋さんにも白い色
    鉛筆だけがありません。絵子さんが首をかしげていると、みどり屋さんがやって来て、
    「絵子さん、何をさがしているの?」
    「あっ、みどり屋さん、白い色鉛筆が1本もないよ。」
    「あれ?ほんとだ。昨日在庫を確認したときは、あったんだけどなぁ。誰かがまとめ買いをしたのかな?
    白い色鉛筆だけが全部売り切れるなんて珍しいなー。」
    「みどり屋さんにもないんじゃ仕方ないね。すぐに必要なことはないと思うし、お正月は仕事も休むから
    また来るね。」
    「ごめんなさいね、絵子さん。またすぐに入れておきますから。」
    みどり屋さんは、すまなそうにペコペコ頭を下げました。

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